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だいたい、今の彼女も告白してきた一年生も学内にいるのだし、二股なんて面倒なことしようとも思わない。
「ムカつくなー」
「やめろよ」
榊原に軽い調子で言い返しながらも、春樹は少しイラっと来ていた。
自分はたぶん、恵まれている。そんなことはわかってる。
背だってそこそこの高さがあるし、運動神経もいい方。汗臭い部活なんて嫌いだからやらないけど、サッカーでもバスケでも、人並み以上にはできる。頭だって悪くない。
だけどそれは、しょうがない。人にはそれぞれ持っているものがある。恨むなら神様を恨んで欲しい。
「お前も髪伸ばせばいいじゃん」
「えー?」
「もう部活やめんだろ」
榊原は野球部だが、ほとんど「元」だ。今年の始めまでは時期エースと期待されていたのだが、肘を故障した。まだ部をはっきりやめたわけではなく、練習にも参加しているようだが、続けられないのは自明だった。
「さっさと退部して、髪伸ばした方がいいと思うけど」
髪が伸びるのには時間がかかる。むしろ、もう野球ができなくて、かつモテたいと思っているのに、野球部に居続けているのが不思議だ。
「うーん、まぁな」
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