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これが仮に、去年同じクラスだった岡田みたいな、サッカー部のふざけた奴だったらわかる。好きだった子を取られた腹いせとか、そういうのは前にもあった。
だけど春樹には、石和に恨まれる覚えがまるでなかった。
次の日、春樹は授業中、石和の観察ばかりしていた。石和は基本的に真面目に授業を受けているようだけれど、雑談が長くなったりすると、教科書の先を読んだり何か内職をし始める。携帯はいじらない。
榊原や斉藤に聞いても、石和のことはよくわからなかった。石和の友人らしい奴らと、春樹はあまり親しくない。
「なぁ、石和、今日暇?」
だから春樹は五限目の終わりに、石和の机のそばに行き、直接話しかけた。
「……なんで」
席についている石和を、春樹は見下ろす形だった。だけど石和の目つきは鋭くて、なぜか自分のほうが劣勢にいるような気にさせられる。
「一緒に帰ろうぜ」
「……だからなんでだよ」
石和はわずかに眉根を寄せて言う。声色は変わらないけれど、迫力がある。
だが、それくらいでは春樹も気にしなかった。
「なんででもだよ」
「はあ?」
「家どっち? まぁいいや。後でな」
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