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春樹はそれだけ言って、席に戻る。石和の目が自分を追っているのを感じて少し気分が良かった。
春樹が帰りのホームルーム後に即、石和の席に行くと、彼はもう教室から出ていこうとしているところだった。だから春樹はすぐにそれを追いかけた。
「おい待てって」
「なんで待つんだよ」
「約束しただろ」
「してない」
斉藤が背後で面白そうに「がんばれよ」と言葉を投げてくる。春樹は振り向いて、思い切り顔をしかめて舌をつきだした。
・
駅まで歩く間、春樹が話を振っても石和はあまり喋らなかった。
「お前彼女いるの?」
特に石和の悪い評判は聞かない。かといっていい評判も聞かない。
「いねぇよ」
「ふーん」
勝った、と声には出さずに思う。
成績、周囲の評判、外見、どこをとっても、石和に自分より優れているところはない。まぁせいぜい身長体重くらいだ。
「部活は?」
「ていうか、何なんだよ」
「何って?」
「なんでお前と一緒に帰んなきゃなんないんだよ」
石和はイライラした口調で、春樹の方を見ずに言う。
「別にいいだろ、クラスメイトだし」
「話したことないだろ」
「この間一方的に話しかけられたけどな」
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