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それは先週、春樹がミナと一緒に行ったカフェだった。その写真のテーブルの向こうには春樹がいたはずだ。
手を伸ばそうとすると、斉藤はまたスマートフォンを自分の手元に戻してしまった。ミナがこんな風に、自分と過ごしたことを発信しているとは知らなかった。
「もっと見たい?」
「いや、驚いたけど別にいいや」
何が書いてあるかは想像がつく。何がおいしいとか、テレビが楽しいとか、新しい服がかわいいとか、きっとそんなことだろう。
「なんでそんなに石和のこと気になんの?」
「気になるとかじゃねぇって」
「珍しいよな、春樹がこんなに誰かにこだわんの」
「俺かわいい女の子にはこだわるし?」
「はいはい。振られたら三日で忘れるくせにな」
斉藤は春樹の方を見もせずに言う。不満ではあったけれど、それ以上は何も言わなかった。
別れた女の子のことはあまり考えたりしない。それは事実だった。振られたときでも振ったときでも、春樹はあまり引きずらない。美徳だと思うのだが、誰も褒めてはくれない。
「だって覚えてたってしょうがないじゃん」
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