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恋人が、別れを言い出してきた。
おまえは、俺がいなくても大丈夫みたいだから、と
諦めの雰囲気を目いっぱいかもし出しながら、疲れた様子で私に背を向けた。
そう、それならそれでもいいよ、とこちらも冷静さを漂わせながら呟いた。
ほんとうは、彼ならもっと一緒にいられると思っていたから、
内心では涙交じりの溜息をついていた。
「理由とか、聞かないのか?」
彼は、自分から言い出したくせにすんなり終わらせずに私に問うた。
「聞いたところでどうなるもんでもないんでしょ?だったら別に・・
他の女のところにいくだとか、そんな話聞かされたって、
どーすりゃいいのよ?」
悪態をつく事、これくらいはしてやらないと。
そして目いっぱい虚勢張ってやる・・・
彼は、鼻で大きな息をしてから私に顔を向け、こう言った。
「もう少しだけ可愛げがあったらな、おまえ・・」
ビックリまなこを彼に向け、半笑いで私も返す。
「なに?私に泣いてすがってほしいの?別れたくないって。アホらしい」
半笑いを続けたけど、本心は・・
言いたい気持ちはあった。別れたくない、と。
でも言えない性格なのだ、私は。
何事も、互いの意見を尊重し、それならそれでよしとする。
そういう性格、なのだ。
「悪かった・・おまえの性格も理解して付き合ってきたんだからな、
俺にそんなこという権利、ないよな。でもこれだけは言っておく。
女がらみが理由じゃないから」
ゆっくりと立ち上がった彼は、元気でな、と優しく穏やかな笑顔を残して
去っていった。
大きな背中は、ちんまりと丸まっていた・・・
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