探偵幼稚園

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「ようこそ 探偵幼稚園 クロウへ!」 そう言いながら、私の方に手を伸ばしたのはスモックに半ズボンをはいた幼稚園児だった。 「ごめんなさい。先生か大人の人いるかな」 最近の幼児は探偵ゴッコとかするのか。なかなか、知的だねえ。 「ふん。この探偵幼稚園では我々に自治をまかされているのだよ。ききたいことがあれば、ボクにきいてくれたまえ。ボクはリーダーの俊。よろしく」 訊きたいことがあればって、訊きたいことばかりなんだが。。。。 まず、探偵幼稚園って、なんだ。私は日本中の大富豪の子息が集まるといううわさの幼稚園で、簡単なお仕事で破格の給与がもらえるという求人をみてきたんだが。 「君は隣のグロウ幼稚園のことをいっているのかな。」 なんということだ。同じ住所で、濁点違いの幼稚園があるなんて、とんだ失礼をしたと、帰ろうとすると 「いやいや。間違っていないよ。求人をだしたのはボクだからね。それに隣のグロウ幼稚園は日本有数のお金持ちが集まると言われているが、このクロウ幼稚園には世界有数の天才園児しかいないんだ。どちらで働くのが、君にとって有利かそのちっさな脳ミソで考えてみるんだね。」 私は、ちっさな脳ミソの警告に従い、この場を去ることにした。ふう、交通費が無駄だったな。 「あ、こら。ちょっとまて。待ってください。どうしても、帰るというなら、ボクのオムツだけでもかえていってくれないか」 言葉は生意気でも、身体は幼児。 オムツを替えてやると、俊はスッキリしたようすで、ミルクを飲んでいる。 俊は5才らしいのだが、オムツって、3才ぐらいでとれなかったっけ。 「ボクほど、様々な能力に秀でているものは、排泄などによけいな労力はかけないんだよ。」 と、涼しい顔をしている。 「ハーイ!シュン。今日の給食のミートローフ、イマイチじゃなかった?今度、うちのシェフ連れてきていい?」 そう言いながら、足で扉を蹴り開けたのは。。。 え。人形? 金髪巻き毛、グリーンの瞳にピンクの頬っぺた。 まるで、ボッティチェリの絵画に出てくる天使がそのまま抜け出したようだ。 「ん?お前 だれ」 顔は美しいが言葉はきたない。 「この前、求人をだしただろう。今日からボクたちの探偵のお手伝いをしてくれるんだ。」 いやいや。私は 慎んで辞退するつもりだが。 「彼は、ケイト。18か国語を理解する。語学の天才だ」 日本語が一番下手にちがいない。 私のような凡人には荷が重いのでと、席を立とうとすると、ケイトがピンクの頬を赤く染めて 「探偵には、ワトソンが必要だ。おい、ワトソン、お前にひとつ任務を与えよう。ぼくのお昼寝布団を裏庭に干してこい。多少、濡れているが、気にしないでいい」 おねしょかい! ケイトのお昼寝布団には、5か国分ぐらいの地図が出来ていた。嫌みを込めてそう伝えると 「ワトソンは無知だな。地球であんな地形のところはないよ。」 幼児に 遠回しの嫌味は通じないようだ。 ところで、私のことをワトソンと呼ぶのは、コナン ドイル氏に申し訳ないので、やめてほしい。 「じゃあ、わとさん?」 三つ目がとおるじゃないんだから。 「ワトソソ」 5才児じゃ、わざとか本当にまちがってるのか区別つかないって。 だめだ。だめだ。名前なんてどうでもいい。もう、私は帰るのだ! キイーー かすかな音をたてて扉があいた。メガネをかけたこどもが静かにはいってくる。手にはルイスキャロルの本をもっている。 「孝太、今日も、図書室いってたのか?」 孝太と呼ばれた少年はちらりと俊の方をみると、コクリとうなずいた。そのまま、奥にあるトイレットとかかれたドアをあけてはいっていった。 よかった。また、オムツを替えさせられるのかと思った。 「孝太は、パズルの天才さ。多少けっp。。」 俊が言い終わらないうちに、今はいっていったばかりのドアから孝太がでてきた。 ちらりと私をみると、俊の耳元でこそこそっとなにかつぶやく。 俊が私ににっこり微笑む。嫌な予感しかしない。 「孝太は、きれい好きで、潔癖症なんだ。どうやら、トイレが少し汚れているらしい。君はきっと掃除も得意なんじゃないかと期待しているよ」 約束は破られるもの、期待は裏切られるものって、だれか、教えてやってほしい。
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