円満退職

1/3
前へ
/421ページ
次へ

円満退職

「みんな。魔王幹部ギルスの討伐、お疲れ様!」  パーティリーダーのマリアがワインの入ったグラスを掲げると、各人もまた各自の飲み物を掲げた。  この辺り、アルスガルトと呼ばれる大陸南西部の土地は、12年前、西の大陸から来た魔王軍を名乗る勢力により占領されていた。12年の時を経て、ようやく人間が国土を奪還できたのである。  人類の悲願であり、その喜びは大陸中をかけめぐることだろう。 「それから、今日は大事な話があるの」  マリアが勿体ぶる。 「………………シエナ王国王子、アストロ。君は今日を最後にパーティから外れてもらうわ。明日にはシエナ王国へと発ってアルスガルトの状況をシエナ王に直に伝えて」 「…………いいだろう」  僅かな動揺を押し込んで、震えもしない声で答えた。  薄々勘付いてはいた。オレはこのパーティにいても役には立たない。だからいつか外される時が来るだろうと。 「ちょ、ちょっと待ってください!」
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加