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「君が弱いわけじゃない。ただ、パーティの編成には不要というだけよ」
改めてマリアがフォローする。テッヘルブルク大公国の姫にしてアストロの親戚である。その強さは大陸最強で間違いない。
『一人一属性』とされる魔法の法則を簡単に破り、彼女一人で、火、水、風、雷、氷、地、光、闇属性の魔法が使える。属性に得手不得手はあれど、詠唱は簡略化され、どの属性の魔法でもほぼ即発動。特に火と雷の魔法はかなりの威力を持つ。アンネロッテには及ばないものの、大岩を溶かしたり大地を焦土に変えるくらいはできる。
ちなみにマリアは剣士である。
剣技と蹴りを組み合わせた剣術に敵う相手は大陸どこを探しても見つからない。今は勿論、過去を遡っても、マリアほどの剣士は存在していない。
勝負開始の合図と共に風が吹いたら勝負が終わっていた、との逸話から疾風と呼ばれたり、あらゆる力を使うことからフォース・ロードと呼ばれたり、その名から戦女神マリアーレを想起して女神の再臨と呼ばれたりしている。
ここに集った精鋭たちが束になっても勝てるわけがない。彼女の真骨頂は剣による近接戦闘であり、魔法は最強の剣士のおまけに過ぎないのだ。
「ま、ついていけなくなったのは事実だからな。抜けさせてもらうぜ」
アストロの能力は異常な生命力とステルス性能である。剣の腕前は普通、魔法は使えない。
あの連中に混ざったら明らかに格落ちなのは紛れもない事実だった。
だってあいつら5分とかからず殲滅するんだもん。魔王軍2万が一瞬で塵になるんだぞ? どっちが魔王だよ。
「父君……ヨナタン公にも会って話をしておく。何か言伝はあるか?」
「必ず魔王を討伐する、と言ってくれればいいわ。イリスにもよろしくね」
マリアが美しく剣を振るい、華麗に舞って戦う姿を傍らで見るのを楽しみにしていたが、どうやら終わりらしい。
祝賀会は尚も続いたが、アストロは荷物をまとめるためその場を後にした。
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