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(結)
さほど広くないアパートの一室。0時にあと1分切った時、点けていた室内灯が不意に消え、空気が奇妙に歪んだと思うと、北側の壁から濁った煙と共に毛むくじゃらの魔物が飛び出してきた。
「ヒャー―――ハハハハハッ!!分かったぞ!分かったぞ!!貴様が心底求めていたものが!こんなにも奥深く隠していたとはな!!」
カン高い声を上げて高らかに笑いながら、夢魔はみるみる内にその姿を変えた。
俺は積まれた段ボール箱の陰から物も言わずに踏み出すと、驚いてこちらを振り向いたそいつの顔面に渾身の右ストレートを叩き込んだ。夢魔は叫びをあげる間もなく出てきた壁に激突し、盛大に蒸発して消えた。ボクシング部の元・高校チャンピオンの拳は気に入ってもらえただろうか。
それにしても妙な感じだ。自分自身を殴りつけるというのは。
後ろを振り返ってみると、友人はベッドの隅で縮こまり、それはもう気の毒なくらいにガタガタ震えて俺を見ていた。まぁ、あさっての方向からカミングアウトされてしまったから仕方がないとは言え、これこそ魔物を見た時の正しい反応というか、微妙に傷つく。慌てた時ほど落ち着くのがお前の信条だろうが。取り戻せクール。約束を破って日付が変わる直前に忍び込んだのは謝るが、心配すんな、悪いようにはなんねぇよ。奥深い場所に気持ちを隠してきたのは何もお前だけじゃない。
俺はベッド横の床に片膝をつき、恭しく彼の手を取って言った。
「ずっと好きだった。つきあってくれ」
夜が明けた時にするのは笑い話ではなく、ピロートークだ。
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「高校時代からの親友が夢魔に目をつけられて、もう余命3時間だと言ってきたんだが。」 (おわり)
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