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そもそもこの世界には人族以外に天族、魔族、獣族、樹族と、様々な種族がそれぞれの領地で暮らしている。(樹族だけは領地関係なく生えた場所で暮らしている)
というか、本当は人族は獣族の一種なのに、圧倒的な頭数と科学力で無理やり独立したので、人族以外からは認められていない。しかも欲深さでも飛び抜けているらしく、めちゃくちゃ嫌われているとか。領地から出たことないので知らんが。
まぁそんな訳で、人族の領地に他種族、しかも魔法ガンガン使える魔王様がいるなんて本来あり得ないのだが、まぁ本人が言うならそうなんだろう。
「ところで魔王候補様、こちらへは何しに」
「候補だけでよい。ふむ、実はな、勇者を探しに来たのだ」
ですよねー勇者ん家に来たってことはそうですよねー
「えと、たしか勇者は長い間行方が知れないとか」
「そうだな。ちょうど4年ほど前から神剣の波動も途切れている。」
「なら」
「しかし奴は確実に生きている。勇者の神剣が新たな勇者の元へ向かっていないからな。」
おいおい、情報だだ漏れじゃねーか。なるほど、これじゃ俺が生きてるってのは知ってる奴は知れてるんだな。
まぁいい、ある程度の奴なら声も上げさせず殺すことが出来る。問題は、そう、こいつみたいなある程度じゃない奴だ。
ピンポイントで我が家に訪問したということは、俺が勇者なのはばれてるんだろう。何故粗茶を求めたのかは一度置いておく。
毒?火?何で死ぬんだろうか。
冷静に考えながら、つまみの兎肉の燻製を出していると、不意に候補様が口を開いた。
「時にお前。なんで人族の領地に住んでいる。」
「人だからですが。」
「嘘をつけ。人臭くないぞ。」
「んー。魔獣を狩って食べたりしてるからですかね。あと人領のスラム出身なんで、人と魔族とのハーフの仲間も多かったですし。」
「…だからこんな所に住んでいるのか」
「はぁ」
住めば都、というが、人と魔の領地の境目であるこの樹海に住むにはなかなか骨が折れる。樹族の中でも嫌われ者の苔類とか日陰を好む樹木が多数生息してるから、その生態に恥じぬ陰湿な嫌がらせをしてくるのだ。普通なら1日もたずに死ぬ。
だから住んでいるのは、俺みたいな国を追われるような脛に傷ある、しかも腕の立つ奴くらいだ。むしろ俺以外の人族はいないと断言してよい。
それくらい、ここの生活は苛酷だ。
「…人魔の合いの子よ。」
「いや人です」
「辛い思いをさせたな。我が今に、住みよい世界を創ろうぞ」
「いや話聞いてください。てか貴方がどうやって俺の生活変えるんですか。」
「我の望みは人族との友好。そのために魔王選挙へ立候補したのだ。」
「…へ?」
「1年後の選挙、我は絶対に勝たねばならない。お前を見て更に決意を新たに出来た。礼をいおう。」
「ちょ、待って、人族と魔族との友好?あり得ませんよ!」
「やらねばならぬ。あり得るかどうかは問題ではない。」
それに、その言葉は散々言われていると、苦笑する魔王候補をポカンと見つめることしか出来なかった。
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