第7話

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第7話

 矢吹の目には、(あわ)れみが浮かんでいる。  妻が死んで八年が経つというのに、結婚指輪をはめたままの私を矢吹はどう思っただろうか?  女々(めめ)しい男だと思っただろうか? 「今でも奥様を愛してらっしゃるんですね」  矢吹は、そう言って微笑んでくれた。  私は……今でも妻を……都和を愛しているのだろうか?  なぜ、指輪を外そうとしないのだろうか?  その理由は、自分でもよく分からずにいた。  だが今は、希里亜の父である矢吹の夫について()ける、またとないチャンスだ。 「矢吹さんの……あ、希里亜ちゃん?」
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