第7話

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 遠くに希里亜の姿が見えた。  希里亜は私達に気付きもせず、ただ真っ直ぐにどこかへ向かっている。 「えぇ、希里亜は毎日、学校が終わるとここに来て、私の仕事が終わるのを待ってくれるんです」  希里亜の背中にランドセルはないが、その腕にはウサギのヌイグルミがしっかりと抱かれている。  おそらく一度家に帰ってから、ここに来ているのだろう。 「あそこは確か……」 「ウサギです。いつもああしてウサギの相手をしてるんですよ」 「よほどウサギが好きなんですね」  希里亜は、ウサギ小屋の前でしゃがみ、ジッと中の様子を見ている。 「こんにちは、希里亜ちゃん。ウサギは可愛いかい?」 「あ、小塚のおじさん!」  希里亜はしゃがんだまま、驚いたように私を見上げてきた。
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