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第8話
次の週の休みも、私はこども動物園に来ていた。
それほど広くない園内の動物は、短い時間ですべて見て回れる。
ウサギ小屋の前に戻ってきた私は、それぞれの違いを必死になって探そうとしていた。
「小塚さん?」
背後に人の気配を感じなかったとは、よほど私はウサギに集中していたようだ。
声を掛けてきたのは矢吹だった。
思わず立ち上がって、挨拶を済ませる。
「いつも美味しい料理を頂いてばかりで、こんなことでしかお返しできずにすみません」
そう言うと、矢吹は静かに笑った。
はにかむような笑顔は、いくら清掃員の格好をしているとはいえ、思わず目が釘付けになる。
「ここの仕事は長いんですか?」
「えぇ、あの子と少しでも一緒にいられるようにと、保育園の頃からここで働いてます」
こども動物園の閉園時間は夕方の四時半で、こんなにも客がまばらなここでは残業もないだろう。
いや……ちょっと待て。
希里亜が保育園の頃から?
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