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「もう! ブロッコリーは入れないで、って言ったのに!」
今まで見たことのない表情で、希里亜は怒りを露わにしている。
その小さな顔を歪める希里亜には、矢吹までもが驚いていた。
「あ、ごめんなさい。つい、いつものクセでうっかりしちゃって……。小塚さん、ブロッコリー苦手でしたよね?」
「あ、いえ……大丈夫です」
食べ物の好き嫌いはないほうだったが、なぜかブロッコリーとカリフラワーだけは苦手だった。
だが、せっかく矢吹達が作ってくれたカレーだ。
ここは我慢して食べるしか……ない。
「おじさん、ムリしないで。そのブロッコリー全部、希里亜のほうにちょうだい」
「うん、ありがとう。でも大丈夫だよ。おじさんは大人だから……好き嫌いしているとオバケが夜中にやってくるんだ」
希里亜の顔には、いつもの笑顔が戻っていた。
私はいつ、ブロッコリーが苦手だと矢吹達に話しただろうか?
いくら思い出そうとしても、今までの会話の中で、そんな話題は一度もなかった。
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