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チラリと横へ目を向けると、希里亜はカレーを頬張りながらもどこか不機嫌そうにしている。
学校で嫌なことでもあったのだろうか?
そんな希里亜を気に掛けるように、時々、話し掛けてみると、いつもの笑顔で答えてくれた。
あれは……たまたまだったのだろう。
楽しい会話と美味しい食事、これが家族……というものだろうか。
私には、もう縁のない光景だと思っていたが、こうして三人で食事をしていると、胸の奥があたたかくなってくる。
食事が終わると希里亜は眠くなったのか、しきりに目を擦りだした。
今日は私の仕事が予定より少し遅く終わったせいで、約束の時間を過ぎてしまっていた。
「希里亜、目を擦ったらダメよ。今、目薬を持ってくるから」
「だってカユイんだもん」
隣へ目を向けると、希里亜は小指で目尻を掻いている。
「あ、ごめんなさい。希里亜はアレルギー性結膜炎で、時々こうして目が痒くなるんです」
矢吹はそう言って、希里亜に目薬をさした。
アレルギー性……結膜炎?
妻も……アレルギー性結膜炎だった。
目が痒くなると瞼を擦らないように、さっきの希里亜と同じように小指で目尻や目の下をそっと掻いていた。
最近では、アレルギーを持っている子供も多い。
これは、ただの偶然に決まっている。
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