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第17話
九月二十日。
朝起きると、私は妻の写真に線香をあげた。
「こんなにも……偶然が重なることってあるんだな」
静かに微笑んでいる妻から、ポツンと置かれた指輪に視線を落とす。
こうして線香をあげるのも、写真に手を合わせるのも今日で終わりだ。
新たな一歩を踏み出すために手を合わせると、私は写真立てを伏せた。
仕事が終わったのは、十九時半過ぎだった。
急いで職場を飛び出すと、途中のケーキ屋で希里亜が喜びそうなショートケーキをいくつか注文する。
時間を気にしながらも急いで帰り、着替えを済ませて隣の部屋に行くと、なぜかドアが少し開いていた。
不用心だと思いながら、ドアを開けて「こんばんは、小塚です」と声を掛ける。
部屋の明かりは点いているが、返事はない。
遅くなってしまったせいで、二人揃ってコンビニにでも出掛けたのだろうか?
そう思った時、中から異様な臭いが鼻をついた。
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