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無理もない。
過去に妻を殺したという事実のほかに、殺人事件と拉致誘拐事件が同時に発生した。
私は第一発見者でもあり、重要参考人でもある。
できることなら、私も捜査に加わって犯人を捕まえたかったが、民間人となった今ではそれも叶わない。
今の私にできるのは、警察に協力することだけだった。
希里亜は……無事なのだろうか?
私は、犯人を絶対に許さない。
深夜になって、ようやく私は解放された。
黄色いテープが張られている隣の部屋を見つめると、私は自分の部屋のドアに鍵を差し込んだが、空回りの感触が手に伝わってくる。
あの時、警察が出入りしたり、そのまま任意同行で連れて行かれたせいで、私は鍵を掛けるのもすっかり忘れていたようだ。
中に入って明かりを点けると、居間のテーブルの上に鉢植えが置かれていた。
それは、真っ赤に咲きほこるサルビアだった。
しかし、その鉢には見覚えがある。
確か、矢吹の部屋の出窓に置かれていたものと同じだ。
それが……どうしてここに?
すると、奥の部屋から何者かが姿を現した。
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