32人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
第19話
「……希里亜ちゃん! いったい今までどこに? 心配してたんだよ。怪我はないか?」
ウサギのヌイグルミを抱き締めている希里亜の元へ慌てて駆け寄ったが、どこも怪我をしている様子はなく、黙ったままの希里亜を私は強く抱き締めた。
「よかった、無事で。本当に……よかった」
希里亜だけでも無事でいてくれたことに、心の底から私はホッとしていた。
しかし、希里亜はまだ口を開こうとしない。
無理もない。
まだ、こんな子供だ。
そんな希里亜へ……私は矢吹の死を伝えなくてはならない。
それに……。
私は抱き締めていた手をゆるめた。
「希里亜ちゃん、お母さんは……亡くなったよ」
そう告げると、希里亜は私の腕をスルリと抜け、鉢植えが置かれているテーブルをジッと見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!