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「私、言ったわよね? もし、浮気したら……信太郎を殺して私も死ぬ、って」
その言葉は、新婚旅行先で妻が冗談交じりに言ったセリフだった。
希里亜は奥の部屋へ向かうと、伏せてあった妻の写真立てと指輪を乗せたテーブルをジッと睨み付けている。
「あの女のために涙を流したのね? 私の時も泣いてくれた?」
私の瞼は赤く腫れていたのだろう。
そう言いながら希里亜は、ヌイグルミの背中から取り出したものを私へ向けた。
それは、刃に赤い染みが残る包丁だった。
希里亜は、それで矢吹を殺したのだろう。
私の名前、サルビアの和名や花言葉、ウサギが好きなこと、飼っていたウサギの名前、アレルギーや目を掻く時の仕草、血液型もそうだ。
ブロッコリーが苦手な私の好きな料理も……。
希里亜は……。
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