第21話

2/2

32人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
 勢いよく襲い掛かってきた希里亜から包丁を取り上げると、その拍子にテーブルに置いてあった鉢植えが倒れて床に落ちていく。  割れた鉢植え、飛び散った土、横たわる赤い花、その光景は……あの日と同じだ。 「信太郎は、私を殺すの?」  希里亜は、その小さな顔に不気味な笑みを浮かべている。  その言葉に、私は高く掲げた包丁を見上げ、とっさにそれをテーブルに置いた。 「本当に……都和、なのか?」  どうか、否定してほしい。  何かの間違いであってほしい。  今の私が望むのは、ただそれだけだった。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加