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第22話
希里亜は、奥の部屋にある写真立てに目を向けている。
「ふふっ、あそこには誰もいないのに、信太郎はちゃんと私を弔ってくれてたのね」
希里亜は……希里亜は、都和の生まれ変わりだった。
それを私は……いったい、どう受け止めればいいのだろうか?
目の前に突き付けられた真実。
私は、その場で膝から崩れ落ちていった。
「私が……希里亜として十六歳になった時、信太郎と結婚して、また一からやり直したかった。信太郎はずっと私のものよ。これからも四六時中、私のことだけを想うの」
希里亜は……いや、都和は私がうなだれている隙を狙って、テーブルに置いた包丁を再び小さな手で握った。
その姿は、まるであの日の都和のようだ。
いっそのこと、私はここで都和に殺されたほうがいいのかもしれない。
私が想いを寄せてしまったせいで、矢吹は殺されてしまった。
誰一人として、幸せにしてやることもできない。
やはり、私には幸せになる資格なんてなかった。
都和も……矢吹も……すべては、私のせいだ。
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