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第23話
いつまで経っても静寂が辺りを包んだまま、何も起こらない。
ゴクリと喉を鳴らし、おそるおそる顔を上げると、都和は黙ったまま冷たい表情で私を見下ろしている。
「また、いつか会いましょう」
小さな都和は、そう言って悲しげに笑った。
そして、私に向けていた包丁の向きを変えた。
「……都和!」
都和は、その刃先を自分の喉へ向けている。
それを止めようと慌てて立ち上がり、手を伸ばす。
しかし、この手が届く前に、都和はそれで一気に自分の喉を切り裂いた。
そこから噴き出す温かい血が、私を赤く染めていく。
今、目の前にある小さな顔は、あの日、最後に見た都和と同じだった。
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