32人が本棚に入れています
本棚に追加
「都和、……都和!」
倒れていく都和を支え、その喉元を押さえながら、私は何度も妻の名を叫んだ。
床に広がっていく血だまりが、そこに落ちているサルビアの花びらをさらに赤く染めていく。
私は……また妻を死なせてしまった。
一度ならず、二度までも救えなかった。
私は、床に落ちた血に染まる包丁を見つめた。
ここですべての過ちを背負い、都和のあとを追って私も……。
何度もそう頭によぎったが、結局、私はそれを手にすることができなかった。
小さな身体を抱き締めたまま、その勇気も持てなかった私は、自分の無力さを呪うしかない。
いや、こんな私でも……できることがたった一つだけある。
最初のコメントを投稿しよう!