チャーハンと風船

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「いらっしゃいませ、ご注文どうぞ」  高校1年生からやってるラーメン屋さんのアルバイト。今日でちょうど1年目。 「チャーハン1つ」 「かしこまりました」  この人いつもチャーハン頼むな。  同い年くらいの男の子。ほぼ毎週土曜日のこの時間にいつも来店する。バスケットボールのユニホームを着ていたことがあったからバスケ部かな。 「お待たせいたしました、チャーハンです」 「ありがとう」  男の子はそう言うとニコッと笑った。  私は女子校に通っているから、こんな男の子の笑顔を見るとドキドキしてしまう。 「お疲れ様でした!お先に失礼します」 「あ、そうだ、彩美ちゃん!今日でちょうど1年でしょ」 「あ、はい」 「お店の外で配ってる風船、あげるよ」 「あ、ありがとうございます」  こんな風船もらってもな。しかもふくらんでるし。どうしよう。  結局風船、持ったままいつもの横断歩道まで来てしまった。なんか恥ずかしいな。高校生で風船なんて。 「あの、落ちました」 「え、あ……」  いつもの男の子……!いつもチャーハン頼んでるあの男の子。 「鍵、落ちましたよ。あ、いつものラーメン屋の」 「あ、ありがとうございます」 「風船?」 「あ、その。今日で1年目で店長がくれたんです。入りますか?なんちゃって」 「ぷっハハハ」  そんなことを言うと男の子は爆笑した。そりゃあそうだよね。恥ずかしい。 「そ、そんなに笑わなくても」 「ごめんごめん。君、高校生?」 「あ、はい!高2です」 「あれ、タメじゃん、俺も高2」 「え、そうなんですか?」 「敬語じゃなくていいよ」 「その後会話弾んじゃって、お茶しにカフェ入ったんだよなー」 「もう、ナンパみたいだからやめてよ、その話は」 「あ、いらっしゃいませ。じゃあまた後で」  高校1年生からやってるラーメン屋さんのアルバイト。今日でちょうど2年目。 「お疲れ様でした!お先に失礼します」 「あ、ちょっとちょっと彩美ちゃん、はい、風船」 「あ、ありがとうございます」 「お待たせ」 「またお前風船もらったのか」 「しかたないでしょ。店長私のこと子ども扱いするんだもん。 「じゃ、帰るか」 「ちょっと話聞いてる?」  ラーメン屋さんのアルバイトは今日で2年目。この男の子とは付き合って、今日でちょうど1年目。
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