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俺たちはなんとか四苦八苦した末に正しい情報を金髪野郎に伝えられたが、南支部には都合よく澄連みたいな使い魔がいるわけもなし。ただでさえ致命的な戦力不足の状況で、正しい情報を伝えるための労力を割く余裕はほとんど残されていなかった。
だから猫耳パーカーは南支部の未来と機関則を天秤にかけた上で、南支部の未来を選んだわけだ。
正直に話すという手も勿論あっただろうが、俺も請負人として活動する上で久三男の存在を隠さなければならないという名目がある以上、気持ちは凄く分かる。正直に話すというのは、ときにかなりのリスクを伴うものだ。余裕がないなら、尚更リスクなど背負いたくないと考えるのが道理ってものである。
この場合、ルール違反になるとはいえ、ある意味で猫耳パーカーは状況に応じた安牌な判断を下したと、俺は素直に思えた。
「南支部が予想以上の痛手を食らってたのは納得できるが……それでも、だ。モモヨ、お前は北支部所属だろ? 当時は緊急任務発令中だってのに他の支部で戦ってたのは、ちょっとばかし勝手がすぎるな」
金髪野郎は目を吊り上げ、ドスの利いた声でモモヨに凄む中、俺の胸中に言い知れないモヤモヤが渦巻いた。
機関則については粗方理解したし、モモヨたちの事情も理解した俺だからこそ、やはりモヤモヤは晴れない。
猫耳パーカーは純粋に南支部とオッサンたちの未来を思い、モモヨは妹分を助けるためにルールを犯してでも助けに行った。仲間は絶対に大切にするべき、そうしない奴は裏切り者と同じという考え方の俺から言わせれば、コイツらの行動はルール違反であれどスジは通っていると確信している。
だが、それを心の中で思っているだけじゃ仕方ない。口に出さないと伝わらないのは考えるまでもないことだが、この気持ちを伝えたくても自分の説明力など信用するだけアホである。今回は珍しく金髪野郎が擁護する気皆無っぽいし、いま言わなければずっとモヤモヤしたままになるだろう。
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