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もしも公的な理由で南支部を助けたかったのなら、ブルーが言った通り北支部と連合を組むという選択肢もあったはずである。端的に言うなら百代は北支部の請負人との報告、連絡、相談を怠り、勝手な行動をしただけだとも言えるのだ。
彼女は親族を純粋に助けたかったのは本当だろうし、ブルーやレクもその想いを嘘だとは思っていないだろうが、ひどい話、ロボット軍団から北支部を守るために生死の狭間にあった北支部の人間からすれば、関係のない話であった。
「本部には俺から報告しておく。そのうちペナルティが発布されるから、それに従ってくれ」
心得た、と百代は静かに頷いた。
「そんで最後に聞きたいことなんだが……」
レクの視線がモモヨから外される。本来説明するべき人物がいない今、自ずと求められるのは必然だろう。確かにメイドと主人という関係だが、何故、という疑問がないわけではない。全く困った話である。
「あの新人が使ってた魔法? 魔術? みたいなやつ。アレは何だ。悪いが、はぐらかさずに教えてもらえると助かる」
あらかた予想はしていたが、予想は見事に的を穿つ。教えるべきかと一瞬思案するが、レクの表情から誤魔化しは効かなさそうだと判断する。
澄男が使っていた魔法。間違いなく``竜位魔法``のことだ。
はるか昔、竜人族の大国を滅亡寸前に追いやった大災厄``天災竜王``ゼヴルエーレが使っていたとされる大魔法。
彼は紆余曲折を経て、その魔法を継承し、自在に操ることができる。今回澄男は怒りに支配されて暴走し、思わず使ってしまった。効果が発動する前に百代によって阻止されたが、天空に描かれた魔法陣までは、どうにもならなかったのである。
さて、どこから説明したものか。
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