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僕は小学生の頃から赤の男爵の大ファンだ。 当時新聞の写真で見た彼の姿に、衝撃を受けた。 ただ、美しかった。 月をバックに立ったその姿は。 深く、赤い__。 F市に入り、商店街通りを抜けるとすぐ、右手前に、ビルに挟まれた路地が見えた。かなり幅が狭い通りなのだが、自転車なら充分だ。 ふと思い出す。 ここを曲がれば近道だったな。 僕はスピードを緩めずに体を思い切り右に傾け、路地に突っ込んだ。 __と。 目の前に。 人がいた。 相手もこちらに向かって走って来る所だったらしく、はっと顔を上げる。 一瞬。 自転車のライトが相手の全身を照らし出した。 真っ赤なマントをなびかせ、 赤いシルクハットをかぶり、 全身赤いタキシードを着た、 __写真と全く同じ。 赤の男爵を。
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