砂漠でスーパーカー

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 この旅にゴールはあるのだろうか。 辿り着く前に私は死んでしまうのではないか。 食糧が尽きるか、ガソリンが尽きるか。 スーパーカーが止まってしまったら、私もスーパーカーと共に死ぬ。 車に詳しくない私は車種名すら分からないが、長旅を共にして愛着が湧いているのだ。 車内にずっといたので、どんな形をしているのか分からない。死ぬ前には一目見てやろう。  この旅は分からないことだらけだ。 分からないからこそ、私は冷静でいられる。 並外れた非日常は、私に現実味を帯びた想像を許さない。 ここはどこだろう。誰の仕業だろう。 もしも、一つでも謎が解けたなら。 私は死を恐怖するだろう。 生への執着でどうにかなってしまうだろう。 ひと筋の希望が、脳を、精神をやけ焦がしてしまうだろう。  「もう、こんがり日焼けしてるけどね」 私は一人で、カラカラ笑った。  夜が来ると、砂漠の景色は一変する。 フロントガラス越しに、ボンネットが月の光を鈍く反射している。 ペットボトルの水は、昼間の熱を吸って生温い。 食料は明日には無くなるだろう。 この閉鎖空間で、自分の死はとても遠くのものに感じる。 自分の人生をモニター越しに見ているような。 ダラダラとつまらない映画のような。 「はやく終わっちゃえばいいのに」    
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