砂漠でスーパーカー

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 夜が明けて、太陽は再び辺り一面を照らした。 朝食のエネルギーバーをモソモソと食べる。 ペットボトルの水を飲む。 太陽が真上に昇る。 エネルギーバーを食べる。 水を飲む。 日が傾いて水を飲む。  終わった。 遂に、食料が尽きた。 私は、はじめてアクセルから足を離した。 スピードはゆっくりと落ちていき、砂にタイヤを取られて、止まった。 砂漠はとても静かだった。  私は、しばらく何もしなかった。 動くのも億劫だ。 今までの時間はまったくの無駄だったのだ。 そして後は、死を待つだけの時間。  深呼吸をして、ドアを開けた。 異常な熱気が車内へ潜り込んだ。 外へ出ると、ただ暑い。 ザクザクと、砂を踏む音だけがある世界。 私とスーパーカーだけがポツリとある。 「結構かっこいいじゃん」 私はスーパーカーを撫でた。 フライパンのように熱くて、思わず手を引っ込めた。 真っ赤なボディは砂まみれだった。  さっき水を飲んだばかりなのに、喉がカラカラだ。 上から下から、熱が私を焼くのが分かる。 太陽は沈みかけている。 もう私には、先に進む気力はなかった。
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