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夜が来た。
砂漠の夜がこんなに寒いなんて知らなかった。
月や星が砂を薄く照らす。
子供の頃に読んだアラビアンナイトの世界を思い出した。
スーパーカーにもたれかかって空を眺めた。
エンジンの熱がほんのり暖かくて、私は無性に悲しくなった。
私は一人でたくさん泣いた。
長い長い夜だった。
死ぬのは、とても怖いことだと思った。
朝、私は生きたいと思った。
死にたくなかった。
どうしても生きたい。
「生きて生きて、生き抜いてやる!」
砂漠の真ん中で私は叫んだ。
ほとんど絶叫した。
スーパーカーに乗りこむと、助手席にはエネルギーバーと水のペットボトルが数本用意されていた。
前方には何もない。
目を凝らしても何も見えない。
後ろを振り返っても何もない。
タイヤの跡が延々と続いているだけだ。
でも、それはわたしが来た道だ。
私が生きた証だ。
窓を開けて、ペットボトルの水を砂にぶちまけた。
小さな水溜まりは一瞬で砂の中に消えていった。
「あばよ」
アクセルをを踏み込む。
スーパーカーは走り出した。
轟音を残して。
私は走り出した。
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