あー、あの日の わいの冒険 1年生 その10 「スーパー焼きイモ大作戦」

3/5
前へ
/6ページ
次へ
「どないしたん?」 「……うんち踏んだ」 「……」  うーん。頭が痛い……  ほんま、あほや。 「臭いが取れへん」  そう言って、なっちゃんは靴の裏だけじゃなくて、靴全体をビチャビチャに濡らして洗っていました。 「そんな、濡らしたら靴履かれへんやんか」 「だって、だって……」  そう言いながら、なっちゃんは涙をポロリと落としました。  そしてそのビショビショの靴を、私の鼻先に近づけます。 「クサッ!!」 「だから言ってるやん」 「だったら、そんなもんかがすな! あほ」 「……」  また、ポロリと涙が落ちました。 「みんな、うんちうんちって言ってくるし。臭いって逃げていくし」  鼻をすすりながら、靴の裏を石ころでこすっています。 「……」  私は大きくため息をつきました。 「貸してみ」  そして、靴をもらうと、近くにあった小枝を拾って靴の裏にまだ微かに残っている、奴らをこそげ落としました。石でやるよりは、溝に入った奴らも落ちるでしょう。  濡れた靴が冷たくて。水道の水はもっと冷たくて。たぶん、なっちゃんの手も、うんと冷たくなってるんやろなと思いました。 「どないするつもりや、靴全体こんな濡らして。ほんまに、あほが」  靴裏を水で流しながら、こすります。  こする、こする、こする、こする。  さむい、あほらしい、ばからしい。  嫌や、嫌や、嫌や、嫌や……  でも、でもな……  なっちゃんが、泣くのはもっと嫌やわ。  私は、ちょっとやけっぱちになりながら、木の棒で擦りました。  だいぶ、靴裏は綺麗になりました。 「ま、こんなもんでしょ」  臭いは…… 残ってたけど。 「はい。あとは家で洗おう」 「……うん」  靴をなっちゃんに返します。 「それから、その靴はビチャビチャやから、ちょっと先生のところに相談に行こう」  そう言って、なっちゃんの手を取りました。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加