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「どないしたん?」
「……うんち踏んだ」
「……」
うーん。頭が痛い……
ほんま、あほや。
「臭いが取れへん」
そう言って、なっちゃんは靴の裏だけじゃなくて、靴全体をビチャビチャに濡らして洗っていました。
「そんな、濡らしたら靴履かれへんやんか」
「だって、だって……」
そう言いながら、なっちゃんは涙をポロリと落としました。
そしてそのビショビショの靴を、私の鼻先に近づけます。
「クサッ!!」
「だから言ってるやん」
「だったら、そんなもんかがすな! あほ」
「……」
また、ポロリと涙が落ちました。
「みんな、うんちうんちって言ってくるし。臭いって逃げていくし」
鼻をすすりながら、靴の裏を石ころでこすっています。
「……」
私は大きくため息をつきました。
「貸してみ」
そして、靴をもらうと、近くにあった小枝を拾って靴の裏にまだ微かに残っている、奴らをこそげ落としました。石でやるよりは、溝に入った奴らも落ちるでしょう。
濡れた靴が冷たくて。水道の水はもっと冷たくて。たぶん、なっちゃんの手も、うんと冷たくなってるんやろなと思いました。
「どないするつもりや、靴全体こんな濡らして。ほんまに、あほが」
靴裏を水で流しながら、こすります。
こする、こする、こする、こする。
さむい、あほらしい、ばからしい。
嫌や、嫌や、嫌や、嫌や……
でも、でもな……
なっちゃんが、泣くのはもっと嫌やわ。
私は、ちょっとやけっぱちになりながら、木の棒で擦りました。
だいぶ、靴裏は綺麗になりました。
「ま、こんなもんでしょ」
臭いは…… 残ってたけど。
「はい。あとは家で洗おう」
「……うん」
靴をなっちゃんに返します。
「それから、その靴はビチャビチャやから、ちょっと先生のところに相談に行こう」
そう言って、なっちゃんの手を取りました。
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