あー、あの日の わいの冒険 1年生 その10 「スーパー焼きイモ大作戦」

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 やばい、やばい。  私は皆んなに謝って急いで、マルバツクイズの準備に取り掛かりました。  そしてマルバツクイズが始まります。  私は、なっちゃんを探したけど、なっちゃんが見当たりません。  どこ行ってんねん。あのあほ。 「あのー、ちょっとだけ待ってもらっていいですか?」  私は、そう言ってマイクを借り、「今からマルバツクイズを始めます。やりたい人皆んな来てねー!!」って叫びました。  そう言うと、走ってやってくる子たちもいましたが、なっちゃんはいません。  そして、クイズが始まってしまいました。  私は、ちょっと心配になって、クイズが始まってもしばらくキョロキョロと周りを探しました。本当にあの、あほあほあほあほあほ。 「次、芽生ちゃんの番だよ」  友達の陽子ちゃんからマイクを渡され、諦めて問題を読みはじめます。だけど、気が入らず、何度も読み間違えてしまいました。それでも何とか問題を読んでいきます。 「お話、大きなカブで、カブをおじいさんが引っ張って、おばあさんが引っ張って、その次にひっぱたのは娘。おじいさんとおばあさんの子供? まるかばつか?」  ざわざわしながら、みんなが動いていきます。だけど、やっぱり、なっちゃんはいませんでした。  ほんと、どこいっとんや。あほあほあほあほあほあほあほあほあほあほ。  あんなにやりたがってたのに……。 「あの、あほ!」  あ。  ああーーーーー、口走ってしまいました。  みんながビックリしてキョトンとしています。  ど、ど、ど、どどないしょ…… 「芽生ちゃん。答え答え」 「エッ、うん」  ボーとしてました。 「答えはバツ。おばあさんを引っ張ったのは孫でした」  ざわざわしながら、間違った子は退場し、正解した子はワラワラとまた真ん中に集まりました。幸い、みんなあまり気にしてないようです。 「次の問題……」  こうして、マルバツクイズ大会は、最後の一人になるまで続いていきました。私も、なんとか全部の問題を無事読み終えて、ホッとした頃、脇を見ると、なっちゃんが少し離れたところに立っているのを見つけました。  あっ、『なっちゃん』と思った時。パチパチパチパチパチと拍手がおこりました。最後の一人が決まったのです。  嬉しそうな優勝者は小さな1年生の女の子。私は、優勝商品の缶バッチを取って彼女に渡してあげました。 「ありがとうございます」  恥ずかしそうに受け取った女の子は、礼儀正しくお辞儀までしました。  再び、みんなからパチパチパチパチを拍手がおこります。  ……かわいいなー。それに、なんて礼儀正しくて賢そうなんや。  私は、チラッと脇のなっちゃんと見比べて、つくづく思いました。  クイズがすべて終わると、すぐみんな散り散りになります。 「あー疲れた」と背伸びをする私の元に、なっちゃんが、お椀を二つ手に持って近づいてきました。 「はい姉ちゃんの分、取っといたで豚汁」  と、豚汁の入ったお椀が渡されました。 「あんた、マルバツクイズやりたかったんちゃうの?」 「うん、そやけど」 「だったら」 「ええねん! だって……豚汁、人気やから、後から貰いに行くと具がなくなるからな」  具沢山の豚汁が、そこにありました。 「靴洗ってくれて、ありがとう」 「……」 「わい、あっちで食べるから。ほな」  というと、なっちゃんはもう一つの豚汁を持って、こぼさんように気をつけながら走っていきました。  私は、渡された豚汁を一口飲みました。  はぁー、ぬるなってるやん。  豚汁、出来立て熱々がええのに。  ぬるなってる。こんなに…… 「ほんま、あほやなー」  私は、もう一口豚汁をすすりました。ゴボウの香りと豚バラ肉の甘味がふんわり広がります。  ……ぬるい。  ……ぬるいけど、美味しい。うん、美味しいわ。  なっちゃんが、向こうのほうで友達たちと楽しそうに豚汁を食べていました。ふざけながら、笑っています。  なんか、ホッとしました。  疲れが取れる気がします。体の()があったまります。  ……良かった。笑ってる。  あ、わりばしないやん。  ほんと、あほやなー。  私は、割り箸と、あったかい焼き芋をもらいに、焚き火の前の列に並びました。 「焼き芋♪ 焼き芋♪」 Fin
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