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やばい、やばい。
私は皆んなに謝って急いで、マルバツクイズの準備に取り掛かりました。
そしてマルバツクイズが始まります。
私は、なっちゃんを探したけど、なっちゃんが見当たりません。
どこ行ってんねん。あのあほ。
「あのー、ちょっとだけ待ってもらっていいですか?」
私は、そう言ってマイクを借り、「今からマルバツクイズを始めます。やりたい人皆んな来てねー!!」って叫びました。
そう言うと、走ってやってくる子たちもいましたが、なっちゃんはいません。
そして、クイズが始まってしまいました。
私は、ちょっと心配になって、クイズが始まってもしばらくキョロキョロと周りを探しました。本当にあの、あほあほあほあほあほ。
「次、芽生ちゃんの番だよ」
友達の陽子ちゃんからマイクを渡され、諦めて問題を読みはじめます。だけど、気が入らず、何度も読み間違えてしまいました。それでも何とか問題を読んでいきます。
「お話、大きなカブで、カブをおじいさんが引っ張って、おばあさんが引っ張って、その次にひっぱたのは娘。おじいさんとおばあさんの子供? まるかばつか?」
ざわざわしながら、みんなが動いていきます。だけど、やっぱり、なっちゃんはいませんでした。
ほんと、どこいっとんや。あほあほあほあほあほあほあほあほあほあほ。
あんなにやりたがってたのに……。
「あの、あほ!」
あ。
ああーーーーー、口走ってしまいました。
みんながビックリしてキョトンとしています。
ど、ど、ど、どどないしょ……
「芽生ちゃん。答え答え」
「エッ、うん」
ボーとしてました。
「答えはバツ。おばあさんを引っ張ったのは孫でした」
ざわざわしながら、間違った子は退場し、正解した子はワラワラとまた真ん中に集まりました。幸い、みんなあまり気にしてないようです。
「次の問題……」
こうして、マルバツクイズ大会は、最後の一人になるまで続いていきました。私も、なんとか全部の問題を無事読み終えて、ホッとした頃、脇を見ると、なっちゃんが少し離れたところに立っているのを見つけました。
あっ、『なっちゃん』と思った時。パチパチパチパチパチと拍手がおこりました。最後の一人が決まったのです。
嬉しそうな優勝者は小さな1年生の女の子。私は、優勝商品の缶バッチを取って彼女に渡してあげました。
「ありがとうございます」
恥ずかしそうに受け取った女の子は、礼儀正しくお辞儀までしました。
再び、みんなからパチパチパチパチを拍手がおこります。
……かわいいなー。それに、なんて礼儀正しくて賢そうなんや。
私は、チラッと脇のなっちゃんと見比べて、つくづく思いました。
クイズがすべて終わると、すぐみんな散り散りになります。
「あー疲れた」と背伸びをする私の元に、なっちゃんが、お椀を二つ手に持って近づいてきました。
「はい姉ちゃんの分、取っといたで豚汁」
と、豚汁の入ったお椀が渡されました。
「あんた、マルバツクイズやりたかったんちゃうの?」
「うん、そやけど」
「だったら」
「ええねん! だって……豚汁、人気やから、後から貰いに行くと具がなくなるからな」
具沢山の豚汁が、そこにありました。
「靴洗ってくれて、ありがとう」
「……」
「わい、あっちで食べるから。ほな」
というと、なっちゃんはもう一つの豚汁を持って、こぼさんように気をつけながら走っていきました。
私は、渡された豚汁を一口飲みました。
はぁー、ぬるなってるやん。
豚汁、出来立て熱々がええのに。
ぬるなってる。こんなに……
「ほんま、あほやなー」
私は、もう一口豚汁をすすりました。ゴボウの香りと豚バラ肉の甘味がふんわり広がります。
……ぬるい。
……ぬるいけど、美味しい。うん、美味しいわ。
なっちゃんが、向こうのほうで友達たちと楽しそうに豚汁を食べていました。ふざけながら、笑っています。
なんか、ホッとしました。
疲れが取れる気がします。体の芯があったまります。
……良かった。笑ってる。
あ、わりばしないやん。
ほんと、あほやなー。
私は、割り箸と、あったかい焼き芋をもらいに、焚き火の前の列に並びました。
「焼き芋♪ 焼き芋♪」
Fin
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