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予知夢 二
囀りが鼓膜を震わせるのを感じて瞼を開いた。網膜に光度の高い光が目一杯注ぐ。
不思議な夢を見ていた。
といっても、小さい頃から度々見ている夢だった。
上空でペガサスに乗る夢。寒さも感じるし、妙にリアルな夢だと思う。だいたい月に一回くらいの頻度で見るので、小さい頃は誰にも一つは定期的に見る夢があると思っていた。
ところで、今回の夢はどこかがいつもと違っていた。リアルさが今までより増している感じがしたし、最後の方の穴が空いた雲や赤い建物、女の人に至ってはこれまで夢に出てすらこなかった。流石に何かの予兆とかではないだろうが、どうも気にかかる。
とまあ、そんなことはどうでも良いのだ。
季節は夏、暦の上では七月二十日という名を与えられた土曜日。夏休み初日でもある。もう一度言う。夏休み初日でもある。
上体を起こし、ベッドを降り、東向きになっている窓へ近寄り、遮光カーテンとレースカーテンをまとめて掴んでがばっと開いた。そのまま窓を開けると、夏の強い日差しと朝の柔らかい光が合わさったような日光が爽やかな風が一掃する。よくこの熱帯のような部屋で寝られたものだ。
手を握り、うんと伸びをする。いやー、良い朝だ。夏休み!やること、無し!良いね。
「紫苑、朝ご飯できたよー」
聞こえるのは、我が母、落合茜の声である。赤みがかった艶やかなバージンヘアーと赤茶色の優しげな目を持つ美人で心優しい母だ。
手早く着替えて二階の自室から一階のリビングへ向かうと、和食を甲斐甲斐しく食卓に運ぶ母が迎えた。
「紫苑、おはよう」
「おはよう」
そう、私の名前は落合紫苑である。女子高生。生憎母のような綺麗な髪色ではなく、純日本人に相応しい黒髪。そこら辺にいるような人だ。ただし、
紫の目を持っている。
普段は黒いカラコンを付けて誤魔化しているが、瞳が何故か紫色をしている。
小さい頃気になって調べてみると、人間が紫の瞳を持つ可能性はゼロではないが、アルビノの人の一部に発生することがある程度らしい。アルビノでもない私がどうして紫の瞳を授かったのかは解っていないが、この目のお陰で随分と苦労したものだ。
焼いた白身魚、茄子の味噌汁、たくあん、白飯のスーパー日本食セットを食べると、私は街に繰り出した。折角朝に時間があるので、涼しい空気を吸って、図書館で休みの間に読む本でも調達しようと思ったのだ。
郊外の一軒家である我が家を出て、閑静な住宅街を進む。地味に暑いと思いながら空を見上げると、下の方で太陽が輝いていた。昼間はどれだけ暑いのだろう。入道雲の成り損ないのようなぼやぼやした雲から飛び出したまだ短い飛行機雲を見るともなしに眺めていると、視界に白く光る一点が映った。
昼間のくせに二等星並みの光を放っている。この季節の白い星ってデネブとかだっけ。でもやっぱり昼だから、まさか隕石?なわけ。
特に気に留めず歩き続けていると、光がこちらへ向かって来ている事に嫌でも気付かされた。確実に大きくなっているし、なんかさっきより明度も強い。てか眩しくなってきた。
え?本格的にこっち来てる?周りには____辺りを見回す____誰も居ない。え?私のとこ来てる?いやいや……え?
動揺しつつ唖然としつつ眺め続けていると、とうとう私の隣に降り立ってしまった。
光はほぼ消えて、燐光を放っている程度になった。馬の様な形をしている。
白馬……翼があるからペガサスか。ユニコーンにはないんだっけ。確かユニコーンは角、ペガサスは翼で、
え?
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