神様のいうとおり

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 大勢の学生たちが朝の校門を抜けていく中にみちはは昨日恋人になったばかりの里中を見つけた。 「里ちゃん!」 「みちは、おはよう」  二人は中学からの腐れ縁で、出会ってから昨日までは本当に単なる親友だった。  だけれど、昨日なんとなく二人に不思議な空気が一瞬流れて、どちらかともなくキスを交わした。  里中に好きだと言われ、みちはは自分の中の特別な感情にその時初めて気づき、自分も好きだと想いを告げた──。   「みちは、今度の土曜あいてる?」 「うんっ」 「泊まりで……どっか行く?」と少し照れながら里中が話すのをみちはは自分より高い場所にある顔を下から含みある笑みを浮かべて覗き込む。 「えー? 里ちゃんのえっちー」 「バカ!」  どさくさに紛れてみちはは里中の腕を取り、その肩にあざとく少し童顔な顔を寄せる。  その時、学生たちの波に似つかわしくない金の髪色をしたの男の後ろ姿が突然目に飛び込んできた。  学生服だらけの人混みに唯一歩く白いシャツの長身な大人の背中──だけれど周りの誰も彼を気にする様子はない。  まるで誰にも彼が見えていないかのように──。  彼を目で追ったのは時間にして何秒かだった──その中で彼はふと振り返り、真っ直ぐみちはを見た。  日本人離れした彫りの深いその顔には鋭く釣り上がった瞳が付いていて、ほぼ金に近い琥珀色をしていた。  周りの音や空気が止まるおかしな感覚にみちはは襲われた。静かすぎるせいか、耳鳴りがして、自分の心臓の音がハッキリと耳にまで届くようだった──。 「みちは?」  突然里中の声だけが耳に入ってきて、みちはが我に返ると里中が心配そうにこちらを伺っていた。 「どうしたの、急に黙って。何かあった?」 「え……あ、ううん。何も」  再び視線を男のいた方へ戻すと、すでに男の姿は消えていて、学生たちの波が普段通り流れているだけだった──。  自分の見間違いだったかと思う反面、おかしな緊張を覚えた心臓だけが未だに早く鼓動を刻んでいて、よくわからない恐怖に似た感覚だけがみちはの体に残った──。
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