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気が付いたらそこはすでにみちはの部屋の中だった──
どうやってここまで歩いて来たのか思い出せない。
さっき男に声を掛けたと思った瞬間、意識がワープしたみたいに間が抜け落ちていて、突如乱暴にベッドに投げ飛ばされた。
「何なんですかっ! あ、アンタ誰なの?!」
当然かの顔をして同じ部屋の中で仁王立ちしている男に必死にみちはは声を荒げた。
だが、男は答えるどころか先にみちはに尋ねる。
「──お前の名は?」
それは温度のない、恐ろしく冷たく低い声だった──。
「柊……みちは」
意識とは別の場所で口周りの筋肉だけが勝手に動くような謎の感覚の中、みちはは素直に自分の名を口にする。
「──みちは」
そう呼ばれるだけで胸を手で強く押し付けられたみたいに苦しくなり、鼓動がどんどんと早くなってゆく。
「俺は大神だ──」
男は無機質な表情の隅で薄く微笑んだ──。
男はみちはの頬に手を伸ばすと近くまで顔を寄せその目を覗き込み、更に恐ろしい言葉を口にする──。
「みちは、お前は俺のものだ──」
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