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「あ、パソコンがフリーズした。ちくしょう、もうすぐインストールが完了するところだったのに。俺の三十分を返せよ」
高層タワービルの三十階で働いている早瀬琉太は最新型のデスクトップ型パソコンに悪態をついた。
琉太の勤めている会社は従業員百人のシステムエンジニアが集まった会社だ。新しいソフトを開発したり、他企業に頼まれてコンピューターを改善している。琉太は今、CGソフトを作るために、制作するものとは違うタイプのCGソフトの最新型をダウンロードしているところだった。
「ちっ! 仕方ないな」
琉太は独り言ちながらもう一度インストールを始めた。琉太のやっていることは社内の誰にも見えていない。従業員が三十人いるこのフロアは一人一人の席がパーテーションで区切られている。九時から六時までが定時だが時刻は六時半だ。女性は帰っている人が多いかもしれないが男性は殆どが残業だろう。琉太は足を組んで背凭れに身を預けた。
インストールが八十パーセント完了したときにまたパソコンがフリーズした。琉太のパソコンは高性能のスペックである。メモリやバージョンの問題でないのは明らかだ。琉太はCドライブのプログラムファイルフォルダを開けた。名前の知らない拡張子のファイルがあった。琉太はそれを削除したがなんだか嫌な予感がした。
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