愛影星人

ヤフーのキーワード検索で調べた西銀座にある変身メイク株式会社、
愛影星人(アイシャドウせいじん)の門を叩いた。

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」

ここにはアナウンサー志望の写真を撮るときとか、ＣＭ撮影のある女優とか、
テレビのお見合い大作戦に出るときとか、
離婚してシングルマザーとしてリスタートきる時とか、
そんな人生の節目に検索して訪れる人が多いらしい。
夜しか開いてない店。

目以外は美人だったわたしが、後姿は美人だったわたしが、変身したかった。
『目の隙間をお埋めします』
そう書いた名刺を妙に艶っぽいメイキャッパーにもらった。

「キレイになれますか」と理想の女優の切り抜きを渡した。

「目は口ほどにものを言います」
と色んなサンプルを出してきた。
そういや可愛いキャラはまつ毛が長かったな。

メイキャッパーは宇宙人という噂で絶世の美女を研究し、
先祖はクレオパトラにもアイシャドウしたとも楊貴妃にチークを塗ったとも、
小野小町に白粉を塗ったとも言われている。
歴史に残るメイク術で眠ってる女子力を最大値にしてくれる。

打ち合わせや説明を受けて施術室に入った。すぐに眠りに落ちた。

4時間後、鏡を見た。

ラーメンマンに似ていた顔が今を時めく女優顔になっていた。

自然と笑顔が溢れてきた。

ネイルまでしてくれてた。

「効果はただし、厚化粧を落とすか、24時間です。コインパーキングの最大時間同じです」

「はい。ありがとございます。明日の結婚式当日だけ綺麗にもっていってくれと頼まれていたので、助かります。
このあと寝ないで遊びに行って、起きときます」

★★★

５０年後、とある老人ホーム。孫がおばあちゃんに会いに来ている。

おばあちゃんに手をあげて挨拶するとフロアにいる全老人が反応して
手をあげる。

みんな同じような菩薩のような満面の笑み。

昨日おばあちゃんの結婚式の写真をみたら、若い時は超絶綺麗だったとびっくりした。
なので久しぶりに会いに来た。

今はピッコロ大魔王に似ているおばあちゃんが『笑顔に勝る化粧なし』と書き初めをしていた。