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「わぁ!」
私が、高校2年生の始業式に遅れそうになって走っていたら、誰かとぶつかった。
もうっ!私は早く行きたいのに。
「すみません」
頭の上から声が降ってきて、私は思わず顔を思いっきり上げる。
「え……。響君!?」
「え……」
なんと、私が聞いた声はいつも目覚めた瞬間に聞いている、響君の声だったのだ……。
一瞬耳を疑ったけれど、帽子をかぶり、マスクをした顔でほんの少しだけ見えた目は、彼のものそっくりだった。
少しタレ目で、二重。だけど、しっかりしていて、パッチリしている。
私が何度も見てきた、あの目とそっくりだったのだ。
「Akaのファンで、最推し響君なんです、私!よかったら、連絡先交換しませんか?」
私は、ダメ元で聞いてみる。
「プライベートなんだ、って言いたいところなんだけど、ぶつかっちゃったお詫びもしたいし、キミが何回もDM送ってくれてるの知ってるよ。結月花ちゃん」
急に、私の本名を呼ばれてビックリする。
「え、なんで名前」
「俺の少ないリスナーさんだからね。ペンネーム、ゆづ、でしょ?あと、LINE画面見えてるよ」
「あ、すみません。じゃあ、LINE交換しましょ!」
夢のようだ。推しとLINEを交換できるなんて。
「じゃあ、またLINEするね!結月花!」
「ありがとう!」
なんて、夢のような時間だったのだろう。
この時、私は時間に遅れそう、ということをすっかり忘れていたのである。
先生と親にむっちゃくちゃ怒られたが、響君とLINE交換した、という事実が嬉しすぎて、話が入ってこなかった。
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