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第4話 私は魔女
はあ、はあ、はあ、はあ
私は私は顔を上げた。
疲れたわ。
でもまた新しいことをやりとげた達成感があるわ。
「もう良いわよ。ソフィアちゃん」
「終わったの、お姉ちゃん」
「えぇ、一通り考えられることはしたわ」
「治ったの?」
「そうね、後はお母さんの体力次第だね」
「う、う、ありがとう。パメラお姉ちゃん」
「本当でしょうか!私は治ったのでしょうか」
「えぇ、治ったはずよ」
「あ、ありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いのか」
うぇ~~~ん!!
今まで我慢していたのか、ソフィアちゃんが泣きだした。
「ソフィア、今までごめんね」
「お母さ~~ん」
エリーナさんはソフィアちゃんを抱きかかえている。
「でも安心しないでね。免疫力の低下や栄養状態の悪化などが重なると、また同じ病気になるから」
「ど、どういう事でしょうか?」
「今回の原因は栄養が足りなくなり、免疫力が下がり悪い菌に感染した、てことね」
「はあ?」
「つまり美味しいものをたくさん食べて、体力を回復しないと駄目だと言う事よ」
「で、ですが、そんなお金は我が家にはありません」
「あるわよ」
「えっ、どこにでしょうか」
「ここ!」
私は肩から下げているポーチを叩いた。
「それは、どう言う」
「実はソフィアちゃんとは、森で出会って」
「森で、でしょうか?」
「そう丁度、お母さんにあげる薬草を探している時に、サーベルウルフの群れに見つかり追われていてね」
「な、なんていう無茶な事を、この子は」
「そこに私が通りかかり、サーベルウルフの群れを倒したのよ」
「倒したですって?サーベルウルフの群れをですか」
「そうだよ」
「お姉ちゃんが親指と人指し指を立てたら、パン、パン、て音がしてサーベルウルフが吹き飛んだのよ」
「吹き飛んだ、て。パメラさんは魔法使いなのでしょうか?」
はい?
今までの流れでそれを言いますか?
貴方を直したのも、魔法ですよ。
はっ!
エリーナさんが突然、思い付いたようにベッドから降り、両手を胸の前で組み跪いた。
「聖女様!」
あっ、またこれなの。
「ち、違います、エリーナさん。さあベッドに戻って」
私はエリーナさんをベッドに座らせた。
「ソフィアちゃんにも言いましたが、私は既婚者なので聖女ではないのよ」
しばらくエリーナさんは、きょとんとした顔をしていたがあぁ、と言って頷いた。
「お母さん、どうして結婚してると聖女様になれないの?ソフィアにも教えて」
「あなたがもう少し大人になったらね」
エリーナさんは優しく微笑んで、ソフィアちゃんの頭を撫でた。
「さっきの話だけど結果として、ソフィアちゃんがおとりになって引きつけた、サーベルウルフが13匹だから半分取り分をあげるわ」
「助けて頂いた上にどうして、そこまでして頂けるのでしょうか?」
どうしてだろう?
パメラ達家族はお金に困らないほど、生活に余裕があった。
ただそれだけ。
自分に余裕があってこそ、他人に目を向ける思いやりの気持ちが持てるからだ。
「なんとなくよ。金は天下の回りものて言うでしょ」
「か、かねは天下の、なんでしょうか」
分かる訳がなかった。
「パメラお姉ちゃんはマジック・バッグを持っているのよ~。そこにサーベルウルフを仕舞ったの」
「マジック・バッグの様な高価な物まで、お持ちなのですね」
「お姉ちゃんのマジック・バッグは、旦那様から(能力を)もらったんだって」
「それはパメラ様はもしかしたら、どこかの高貴な貴族の方でしょうか?」
「やめてよ、パメラ様なんて。ガラじゃない。私は魔女よ」
「魔女ですか」
「お姉ちゃん、かっこいい」
「でへでへへへ」
中二病を病んでいるパメラには、魔女という響きがとてもカッコよく思えた。
だが旦那様の知識を吸収しすぎて、常識とはズレていることに気づかなかった。
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