第5話 猟師組合

1/1
前へ
/10ページ
次へ

第5話 猟師組合

「エリーナさん、素材の解体や買取をしてくれるところはないの」 「猟師組合ですね」 「猟師組合?冒険者ギルドみたいなものかな」 「冒険者ギルドが何なのか分かりませんが、この町で素材を売るなら猟師組合です」 「そうなんだ。で、どこにあるの猟師組合は」  エリーナさんに猟師組合の場所を聞いた。  それから荒くれ者が多いから、気を付けるようにとも言われた。  猟師組合は町の入口近くにあった。  どの街でもそうだけど、戻ってきたらすぐに受け渡し出来た方が楽だからね。  門に近い場所に構えるのかな。  スイングドアを開け中に入る。  昼近い時間帯だからなのか、3つある受付の人達以外は誰もいなかった。  う~ん。  普通ここはお約束で誰かに絡まれる、とか綺麗なエルフが受付にいるとかだけど。  パメラは家族と【スキル】情報共有で、お互いの情報が分かるようになった。  旦那様の知識と言う情報を得てからは、更にパメラの妄想癖に火が付いた。  特にファンタジーものが大好きになっていた。 「あの~、なにかお困りでしょうか?」  受付の1つに居たキツネ耳の女の子に話しかけられる。  ほう、この国では獣人がいるんだ。  ということは、獣人差別がないのかな。 「あの~」 「いや~普通はここで絡まれたり、するはずなんだけど」 「しません!それにこの時間には誰も戻って来てません」 「そ~、では買取をお願いしたいの」 「買取すね。でこちらにどうぞ」  私はキツネ女子に案内され、受付の1つに向かった。 「猟師組合は初めてでしょうか?」 「そうね」 「ではまず、登録からしますから。こちらにご記入をお願いします。文字は書けますか?」 「ええ、もちろん書けるわよ」  私は登録書に記入を始める。  名前:パメラ  種族:人族  年齢:18歳  性別:女  職業:魔女  特技:派手に破壊 「これでいいかしら」 「はい、ありがとうございます。職業魔女ですか?」 「そうよ、見たら分かるでしょ?」 「えっ、え~」  私は銀狐族のフェイ。  まだ新人で受付に立っていると、変な格好の女の人が入って来た。  この暑い8月に黒いローブを着て黒い尖がり帽子をかぶっている。  右手首に布を巻き、左目に黒い眼帯をした白銀色の長い髪の女性。  関わりたくなかった。  だけど新人だから先輩2人に促され、ロビーで佇んでいる女性に声を掛けたんだ。  魔法使いならわかるけど、魔女なんて聞いたことがないわ。 「パメラさんですね。私は受付のフェイと申します」 「よろしく~」 「猟師組合についてはご存じでしょうか」 「いいえ、冒険者ギルドとどう違うの」 「やはりパメラさんは、他の国から来られた方なのですね」 「どうして?」 「同じ素材買取でも国によって組織が違うのです。猟師組合のところもあれば、冒険者ギルドの国があると言うことです」 「国によって違うんだ。はじめて知った」 「この大陸の南に位置するウェルダン国は、冒険者ギルドはなく猟師組合が仕切っています」  仕切ってる、893さん?  私がキョトンとした顔をしていたからなのか、フェイさんの話は続く。 「どの国でも魔物の素材は、防具などに使われ多大な金銭に替わります。  1つの街に2つの買取組織があったのでは、価格競争で共倒れになる。  流通ルートを確保し素材の処理が、できなければ意味がない。  その結果、猟師組合がこのジヨルド国で流通経路を確保し、冒険者ギルドはできなかったという事です」  そしてまだフェイさんの話は続く。 「今は落ち着いていますが、いつどこで覇権を狙って抗争が起こるかわかりません。  最近の上の者は大人しくなり円満を願っていますが。  それに従う下の者はまだまだ荒くれ物が多く、カチコミしながら勢力拡大を狙っている奴も多いのです、それに…」 「「 パコ~~~~ン!! 」」  物凄く大きな良い音がした。  よく見ると殺傷能力ゼロとは思えないほどの効果を持つ、ハリセンを持った女性が立っていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加