愛情失調

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愛情失調

「あなたの病名は」 『愛情失調』 「です」 医師は平然とした様子で言う。 「治療法は他者からの愛です」 何故か息が苦しかった 「もし、悪化したら」 「あなたは、人じゃなくなる」 心はなぜか軽い どうせ、僕のこと 誰も 必要にしてないし いつ、消えたって 誰も気にしない 「早く、愛されて下さい」 そんなこと言われたって オレにはわからない 愛 ってなんだ? 愛情 ってなんだ? 「愛は愛されることで得られるものです」 なんだ? 愛されるって なんだ? 愛って 「愛など愛でしかないのですよ」 視界が暗くなる つま 僕が今まで愛と 読んでいたものは 一体、なんだったのだろうか 「あなたが、今まで受けてたのは」 「同情です」 「愛情ではありません」 待ってくれ 愛されるってなんなんだ 同情ってなんなんだ 僕は、愛を知らずに死にゆくのか? 「嗚呼、愛情失調が悪化してます」 医師はなんの感情も持たない目でこちらを見た 「愛されたい」 絞りでた言葉は 誰の心も揺さぶらず ただ、空に消える 「あなたはもう、人間ではない」 愛されていないものを ヒトは 『ゴミ』 と 言うのですよ。 最後に聞こえた言葉は オレを再生不可にするのに ぴったりだった
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