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午前中の間、ぼく、パパ、ママの三人は、アスレチックでずっと遊んでいた。
お昼になったので、ぼくたちはご飯を食べるために公園にある広場にやってきていた。広場は、学校の校庭ぐらいの大きさをしていて、芝生が一面に広がっている。辺りには、ぼくたちと同じように、お昼ご飯を食べにきている家族がたくさんいた。
パパが敷いてくれたブルーシートの上に座り、ぼくはお弁当箱を開いた。おにぎり、サンドイッチ、さくらんぼ、水筒に入ったコンソメスープ。お腹が減っていたので、ぼくは無我夢中で食べた。
「これさ、明日筋肉痛になるよね、確実に」ママが呟く。「もう、足が上がらないもの。腕もパンパン……」
「いちおう、子供が遊ぶためのアスレチックだけど、その気になれば大人も遊べるのが凄いよね」パパがスープを飲みながら言う。「そういうところも計算して作られているのかなぁ」
ぼくは、パパとママの会話を聞き流しながら、おにぎりを片手に、広場の様子を眺めていた。
しばらく、ぼんやりとしていると、少し遠いところに、楽しそうに走り回るピンク色の服を着た女の子が見えた。
その女の子は、広場の真ん中あたりで大きな円を描くように走った後、森の中へと入っていった。
それは、アスレチック遊具のあるエリアへと続く方向だった。
ぼくは少し待ったが、女の子を追いかける人は現れなかった。
「あの、パパ、ちょっと行っていい?」ぼくはパパに尋ねた。
「ん、お手洗いですか?」パパが問う。
「あ、うん」ぼくは何故か嘘をついた。
「大丈夫? 場所わかる? ……って、駄目よね、ついていかないと」ママは腰を浮かせた。
「大丈夫だよ。ひとりでいけるもん」ぼくは少しムッとして言う。
「すぐ近くにあるし、大丈夫でしょう」パパは微笑んだ。「直樹、真っすぐいって、真っすぐ帰ってくるんだよ?」
「うん!」
ぼくは立ち上がると、トイレのほうへと向かって歩き始めた。
広場の隅にあるトイレに近づいて、陰に隠れてから、ぼくは森の中へと入っていった。
(こっちのほうだっけ?)
ぼくは、先程、森の中へ走っていったピンク色の女の子を探していた。
森の中には、たくさん看板があって、自分がどこにいるのかすぐにわかるようになっていた。
アスレチックのある方向へと進む。
しばらく歩くと、辺りから人の気配がなくなっていった。
ここらは、あまり人気のない場所のようだった。
そのとき、女の子の泣き声が何処かから聞こえた。
声がする方向へと進むと、すぐにピンク色の服を着た女の子を見つけることができた。
(やっぱり)
その女の子は、大きくて真っすぐな木の真ん中あたりに座って泣いていた。
木には、ところどころ足場のようなものが打ち込まれている。たぶん、その足場を利用して木登りをするアスレチックなのかな、とぼくは思った。
木に近づき、顔をあげて、「大丈夫?」とぼくが声をかけても、女の子は泣きわめくばかりで、返事をしてくれない。
周りには誰もいなかった。
少し歩いて大人を探したけれど、なぜか見つからない。
(ど、どうしよ……)
このままだと、女の子は木から落ちてしまうかもしれない。
いちおう、落下防止用のネットがあるみたいだったけれど、ぼくは心配だった。
ぼくは意を決して、木に登ることにした。
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