パパ活女子ミラクル転機

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 翌昼、久美子は亀頭と六本木ヒルズ内にある隠れ家的焼肉店でA5ランクの宮崎牛ステーキ定食を食べていると、スマホが振動した。森からの電話を受信したのだ。 「こんな時に何なの!」 「えっ、こんな時?」 「いいから早いとこ用件を言って!」 「ああ、えーと、どうせ君みたいな美人は僕なんか相手にしてくれないのは当然と言えば当然で無理に付き合ってくれとは言わないけど、うちの大学でヌードモデル募集してるんだ。いい金になるぜ。やってみないか?」 「何言ってるの!私がお金で動くと思うの?私の裸が観たいばっかりに!このスケベ!もう二度と電話しないで!」  電話を一方的に切った久美子に亀頭は訊いた。 「随分嫌っていたようだが、誰からだい?」 「元同級生で今、美大生なんだけど、ヌードモデルやらないかって言うのよ」 「脱ぐだけじゃ嫌か?」 「やだ、そんな聞き方。そうじゃなくて複数の男の前で裸になるんでしょ。そんな恥ずかしい真似出来る訳ないわ!」そう言いながらその晩、東京ミッドタウン内にあるホテルのゴージャスでデラックスなダブルルームにて亀頭とベッドインして思いっきり恥ずかしい事をしたのだった。  森は諦めきれなかった。あの見るからに柔らかそうで抜けるような白い肌。是非とも観たいし描いてみたい。  彼女は太っ腹のお金持ちが好きと言っていた。美人は玉の輿に乗るものだからな。だからモデル料を弾めば、それも破格の値を付ければ、応じてくれるかもと森は考え、六百人以上いる油絵学科の学生の内、既に自分の友達十名に訳を話して一人当たり千円ずつ出して貰い、友達達も協力して森と同じようにして金を集め、合わせて7万5千円貯まった。而して油絵学科中の学生に久美子の噂が広まって5日後には百万近く貯まるに及んだ。それだけ学生達は美人モデルに飢えていたのだ。  これならいけると思って早速、森は久美子に電話した。ところが久美子はもう着信拒否設定をしていたので繋がらなかった。  こうなったら久美子を見つけ出すしかない。新宿の何処かに住んでいるのはまず間違いない。森は親に頼んで自分のスマホに転送された高校の卒業アルバムに載っている久美子の写真をテキスト付き画像としてツイッターで拡散するべく皆にリツイートさせ、油絵学科中の学生に行き渡らせる事に成功した。誰か見た者があるか確かめ、且つ今後見つけ次第交渉する為だが、誰も見た者はおらず月日が経っても誰も見つけられなかった。  痺れを切らした森は、或る日、思い切って学部長に久美子の画像を見せ、自分と久美子との間にあったこれまでの経緯を話し、百万円をモデル料として久美子をモデルにしたい意向を伝えると、学部長は驚きの色を顔に表した。 「残念だが、わしも見た事ない」 「そうですか。しかし、僕ら学生は決して諦めませんのでご協力のほど宜しくお願い致します」 「うむ。分かった」  学部長は森が去った後、学園内で周囲に誰もいない所まで来ると、スマホで久美子に電話した。 「久美ちゃん、森徹を知ってるだろ」 「うん、知ってるけど、何で友利さんが知ってるの?」 「わしは無論、身バレしたら身の破滅だから嘘の肩書で通していたが、ここだけの話、実はわしは武蔵美の造形学部の学部長をしてるんだ」 「えー!という事は森君は友利さんの教え子?」 「そうなんだ。で、今さ、うちの学部で久美ちゃんをモデルにしようと盛り上がっていてな、相場は一万三千円位なんだが、特別に百万出すってさ」 「えー!百万円!」 「そうだ。わしの学部の学生が千円出し合って貯めたんだ。凄いだろ」 「私を描きたい為に?」 「そうだ。わしにまで高校の卒業アルバムの久美ちゃんの写真を見せて久美ちゃんを見つけ次第交渉してくださいって頼まれてな、で、今、交渉しておるという次第だ。どうだ、やってみるか」 「う~ん」と態と迷って見せる久美子。 「学生らは在り来たりなモデルに飽き飽きしておる。飛び切り美しい女を渇望しておるのだ。彼らの願いを叶えてやってくれ」 「じゃあ、三倍にしてくれればやってもいいわ」 「さ、三倍って三百万って事か!」 「そうです。学生さん一杯いるんでしょ。あと2千円出し合えばいい事じゃない。訳ない事じゃないですか」 「ハッハッハ!君には全く参るよ。ま、兎に角だ、森に電話してやってくれ。多分、久美ちゃんの要求を呑むよ」 「ふふ、分かりました」 「じゃあ、頼んだから切るよ」 「はい」  久美子は高級マンションの一室にて大画面液晶TVで映画を観ながらパパ活完全休業日を満喫している最中だった。で、逸る気持ちを抑えきれず一時停止していたDVDを再生する前に森に電話した。 「もしもし、やあ、瀧田だよね」 「そうよ」 「よく電話してくれた。いやあ、嬉しいよ!」 「ふふ、森君ってほんとにスケベね」 「えっ」 「私、学部長さんと交渉したの」 「あっ、学部長と会った、何処で?」 「そんな事どうでもいいでしょ。で、知ったんだけど、あなた、私の裸が観たいばっかりにお仲間さん達から百万も集めたんですってね」 「あっ、まあ、観たいばっかりにって言うか、美大のヌードデッサンの授業は君が考えてるようないやらしいものじゃなくて真剣そのものなんだ。だから君の美しさを芸術として描きたいばっかりにと言った方が適切だと思うよ」 「ふふ、あらそうなの。それは嬉しいわ」 「じゃあ、吞んでくれるかい?」 「三倍ならね」 「三倍?」 「鈍いのね」 「あっ、つ、つまり、三百万ならってこと?」 「そう」 「ど、どうしても?」 「どうしても」 「あの、普通は美術モデル専門の事務所からモデルさんが派遣されてきてモデル料の相場は」 「一万三千円なんでしょ」と久美子は容喙した。「でも私は特別なんでしょ」 「そうだよ。だから普通の相場の百倍出すって訳だ。なのに君はそれでも満足できない?」 「そうよ。呑めないなら断るわよ」 「い、いや、んー、しょうがない。よし、分かった。何とか都合するよ」 「ふふ、そう来なくっちゃ!じゃあ切るね」 「えっ」ブチっと電話が切れた。  
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