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この会社の誰も知らない、いや、専務と俺しか知らない黎琳の正体。
名前負けしてない顔立ちとスタイルから想像できないが、つらっと下ネタを連発するのだ。
それも、おっさん臭い下ネタばかり。
「せめて会社で下ネタはやめろ」
俺は頭を抱えて盛大にため息をついた。
「いーじゃない。凱人しかいないんだから」
「そういう問題じゃ――」
「――あーあ。いいなぁ。私も恋愛したいなぁ」
秘書らしからぬ、膝に肘を立てて頬杖をつく。
「すればいーだろ」
「めんどくさーい」
「なんだ、それ」
「男は面倒臭いもの。そか! 女と恋愛すればいいのか。私、るりちゃんとならイケるかも」
「はぁ!?」
「女を顔やスタイルでしか評価しない馬鹿な男なんかより、私の方がよほどるりちゃんを理解して可愛がってあげられるもの」
黎琳は以前から、自分の容姿や職業に釣られて寄って来る男どもに辟易していた。
その上、幼少からの付き合いで気心の知れた誉ですら、顔とスタイルのいい女をとっかえひっかえだ。
誉が見た目にこだわるのは、黎琳を意識してるからだと思うけど……。
とにかく、面倒臭くしているのは自分たちだということに、二人だけが気づいていない。
「とにかく! 凱人ジュニアがるりちゃんのお口に合わなかったら教えてね? 私が優しく慰めてあげるから」
美人秘書の本気の微笑みに、背筋が伸びる。
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