3 こういう妹も必要ありません

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「つまりあなたは『公爵令嬢として生まれながら格下の家に嫁ぐのは嫌だ』とか言って婚期を逃した上、隣国の王家に嫁いだ末の妹ノエルに劣等感を抱いていて、なんとしても生まれ持った〈公爵家〉というブランドだけは維持したいがために、この家から出て行く事になるような結婚は受け入れ難いという事ね?」 「ぐっ……!」  ふん。図星ね。 「次期ベロム侯爵夫人ではなく、ずっとデュシャン公爵令嬢でいたいと」 「……」 「本当にイーサンを愛しているのかしらと疑問に思うには思うけれど、置いといて。たとえばこんな事を考えたのではないかしら。私がイーサンに嫌悪感を抱き跡継ぎを産む事ができず、代わりにあなたが産んだ私の夫──今は婚約者だけど──との子を、次期デュシャン公爵にして自分が実権を握ろうって」 「……難しく考えすぎだっていつも言ってるでしょ。お姉様」 「そう? だったらどうしてそんなにバツが悪そうな顔で私を見るの? ミシェル」  私たちは見つめあった。  真剣に、睨みあった。  そして、妹が理性を失った。 「あっそう! なによ!! 長女ってそんなに偉いのッ!? たかが2年早く産まれただけでお父様に贔屓されて、全部ご自分の思い通りにできるって!? デュシャン公爵家にしがみついているのはお姉様のほうじゃない!!」  私は眼鏡を直し、冷静に真実を告げた。 「しがみついているというより、資質を認められて後継者としての教育を施されたに過ぎないわ。そして、この家の当主が代々受け継ぎ、次の世代へと遺していくものがなんであるかを理解し、正統な管理の元で守っていく義務を担っている。あなたには無理よ、ミシェル」    権力と色に狂って醜聞を撒き散らし、没落一直線。  そんな危険は、排除しなければならない。 「馬鹿にしないで! お姉様より美人よ。イーサンも私を選んだでしょ!」 「ええ。だから、お父様に選ばれた私はその権限であなたとイーサンを結婚させるわ。その上で当公爵家はベロム侯爵家と距離を置き、威厳と伝統、そして気高い王家の血筋の一端を守り続けます。いつかまた会いましょう、未来のベロム侯爵夫人」 「……っ、このひとでなし!」  姉妹の絆は強い。  命まで取りはしない。  さようなら。可愛かった私の妹。  格下と蔑んだ侯爵家の男と愛を育み続けるがいいわ。  ね、ミシェル。
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