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「まあいいんじゃない? ひとの好みはそれぞれだし。尾形さんけっこうイケメンだし」
雅が俺と尾形を交互に見比べてニッコリ笑う。思ったより好意的な反応で、拍子抜けする。
「あ、あのそれでもういっこ……」
「それはオレから話しますね」
尾形が俺を制して、膝に手をおいて話し出す。
「実はオレの姉が同性愛者で。子どもが欲しいらしいんですけど……」
さすがに子どもの話は衝撃だったようだが、さすが大悪魔。受け入れるのは早かった。
栞が烏龍茶を飲みながら言った。
「あ〜、でもちょうどいいかも。実は私も結婚考えててさ。デキ婚だからちょっと言いにくいと思ってたけど、暁の話よりインパクト薄いだろうから、一緒に報告に行くわ」
「は?」
「私の相手も連れてくるから。暁、日程合わせよ? あ、尾形さんのお姉さん達もよかったら一緒に。どうせ顔合わせしなきゃなんないし」
「あ、はいっ」
「うわ〜、なんかいっぺんに家族増えちゃうんだけど」
うきうきするような雅の台詞に、碧が俺を見てさらに言葉を重ねる。
「もう今さら一人二人孫が増えたってうちの親気にしないわよ」
「は? え?」
なんか話のスピードについていってないの俺だけか?
「あ、なあ兄貴にはいつ話すか……」
「樹兄、今美和さん臨月でそれどころじゃないわよ。三人の怪獣のお世話しなきゃだもん」
雅がアイスココアをストローで啜ったあと、「絶対うちらに泣きついてくるよね!」と姉たちを見て半ば楽しそうに言う。栞が同感〜、と片手を上げながら、
「だから皆集合したときにさらっと話せばいいわよ」
いいのかそれで?
一人困惑気味になり、隣に腰掛ける尾形をちらっと見上げる。尾形はニコニコしながら三人を見ている。
「いや〜しかし皆さん先輩に似て美人さんばっかりですねえ」
……まあ分かってたよ。尾形がこういうヤツだって。お前のそのバカみたいに前向きなところに俺は救われてるよ。
悩んでいても仕方ない。どうせ姉たちの決めたことに俺が口を挟む余地はないのだ。
諦めにも似たため息をつきながら、俺は苦笑した。
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