きっと消えやしないけど、それでも傷を癒すために

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翌日。 朝の休み時間に虐めは行われていた。 「おい、立て」 彼女は希望を見出し、微かに微笑んでいた。 「何笑ってんだよ」 一発拳が飛ぶ。悲痛そうに彼女は涙目になる。 僕にある全ての勇気を出して、僕は声をかける。 「ねえ、面白そうなことやってるね!混ぜてもらっても良いかな?」 クラスのみんなは何を考えているんだ、こいつは。という顔だった。権力グループの一人が言う。 「あは、いいよ〜!コイツに腹が立ったのかな?」 「ありがとう」 僕は堂々と立ち、彼女の前に立ち──。 「反対を向け」 語気を強め、低めの声を出す。みんなが唖然としているのがわかる。彼女は僕の渾身の演技に合わせ、顔を顰め嫌々反対を向く。 僕は全力で蹴りを入れた。いくら全力と言ってももやしの僕の全力はまだマシなものだ。 「ふう、少し弱かったかもしれない!ごめんね」 後ろを振り向き、見守っていた彼等に笑顔を見せる。 「あ、ああ…」 「ノリいいじゃん!気に入った〜」 様々な反応を見せた。  * この日はあっという間に過ぎていった。意外とバレないまま放課後。虐めっ子たちは僕を気に入ったらしく下校の約束を取り付けてくる。 その前にお手洗いと言って久野と待ち合わせしていた場所へ急ぐ。 「ごめん、痛かった?」 「大丈夫だよ。しかも薄いクッション材のようなものまでくれたでしょ?というかあの迫真の演技凄かった〜。思わずビックリしちゃった!みんなも騙されてたよ」 僕は事前に貸していた防弾チョッキを見せつけられる。心底安堵した。念には念を入れ準備した甲斐があった、、、、。 「それじゃあ、また明日」 「うん、また明日」 下校中、僕は彼らに暴力より言葉の方が素質があるのでは、と言われる。僕は言葉で彼女を虐めることになった。
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