うつくしいもの

はじまり

ＪＵＫＥの４人は他のバンドの人達と別れると、

追って来ているファン達の方を振り返って涼雅が、

「今日はありがとう」

と叫ぶ

ファンの女の子達はみんなメンバーに寄って行って、

手紙やプレゼントを渡している

私も同じように涼雅に手紙を書いて渡そうかと思っているけど、

いつも書けないでいる

書いた所で、
涼雅に渡せる勇気がないかもしれない

だって、手紙を読まれるとか恥ずかしい

私が彼らのライブに来るのは今日で５度目だけど、

いつもこんな感じ

他の子達のように出待ちはしても、

一定の距離から近付く事が出来ない

握手すら、出来ない

それは恥ずかしいのか、

涼雅に簡単に近付いたらいけないような気がしてしまうのか

以前に１度、

ライブ後にライブハウスの前で彼らが自費製作のＣＤを売っていた事があった

その時は、それを買う時には凄く涼雅に近付いて、

「あ、あの……。
頑張って下さい！！」

「サンキュー」

くらいの会話のやり取りはしたけど……

あの時の私は、
終始ずっと俯いていた

だけど、涼雅が笑ってくれているのは、

その空気で伝わって来て嬉しかった