ぷろろーぐ

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彼は寝室に入り荷物を纏めると、 そのまま動けずにいる私を一瞥する その目は、反抗もしない私を軽蔑している 「後の荷物は、全部捨てて」 「――うん」 もう振り返る事はなく、 彼は部屋を出て行く 出て行くその手には、 彼が大切にしていたあのアコースティックギターはない 私だけじゃなくて、 音楽も捨てた 音楽は、彼が一番大切にしていたものなのに 涙は出ない もう散々泣いたから 泣く力さえ、 私には残っていない まるで、脱け殻のよう あの頃を、懐かしく思ってしまう 全てが美しく、 眩しかった――… あのライブハウスを――
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