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禄はベルトを外した。パンツの前を開くと、下着の上からでも勃っているのがわかるそれに、貝地の手を当てさせる。
「これでも信じませんか?」
貝地はさらに眉を下げ、照れたように視線を揺らした。禄は彼の手を離し、シャツを脱ぐ。
「貝地さん、自分のこと悪く言うけど、明るくて盛り上げ上手な人だけが魅力的なわけじゃないですからね。周りに目を配って、誰か困ってたら自分から助けに行って、ずっと穏やかで、でも、作品への熱量はすごくて、そんで、脚本がめちゃくちゃ面白い。今回のドラマがうまくいったのは、脚本の力が大きいのに、いつも謙虚だし。そういうところに、俺は惹かれたし、尊敬してるんです」
目を見開き、何かを言おうと口を開いては閉じる、を繰り返す貝地の顔が、ふいに、泣き出しそうに歪んだ。
たまった涙が、目からこぼれ落ちる。
慌てた禄は、彼の涙を優しく拭い、あやすように目元にキスをした。
「すいません、気に触りました? 泣かせたかったわけじゃないんです」
こみ上げた熱を持て余し、言葉になかなかできない貝地が、禄の手に触れた。
「違うんです、嬉しくて……。そんなふうに言ってもらえたの、初めてだから。俺、鯨岡さんの、誰にでも優しくて、周りを明るい気持ちにしてくれるところとか、すごく憧れてて。だから、鯨岡さんに褒めてもらえると、泣いちゃうくらい、嬉しいんです」
今度は、禄が、大きな感情を持て余す番だった。
やばい。心臓が爆発する。
貝地への強烈な想いに苦しくなりながら、彼の唇に噛み付いた。優しかった先ほどとは違い、激しく口付ける。
やがて、顔を離した禄は、貝地に覆いかぶさったまま、もう一度訊いた。
「していいですよね?」
とろけた瞳で見上げる貝地は、「……はい」と小さく返した。
◇
指で充分にほぐしたそこに、ゆっくり入っていく。初めてだと言う貝地の言葉通り、きつく締め付けてきた。
「ああ……っ」
貝地が、禄の体の一部を飲み込みながら、吐息を混ぜた声を漏らした。その色っぽさに、頭が沸騰する感覚がした。
「痛くないですか?」
一度腰を止めて、貝地の様子を窺う。禄のほうは、好きな人と一つになれたことへの感動が、胸を熱くしていた。
「痛くないです……っ。でも、鯨岡さんの、おっきいから、苦しくて……っ」
「っ……、あんまり、おっきいとか、言わないでください」
やがて、貝地が禄を受け入れている感覚に慣れきた頃、「ちょっと動くけど、痛かったら言ってくださいね」と声をかけ、腰を緩く動かした。
「んっ」
鼻にかかった声を出した貝地が、はっとしたように手の甲で口を塞ぐ。それを禄が優しく外した。
「声、聞かせてくださいよ」
「っあ……恥ずかしい……です……んっ」
本気で嫌がっている素振りではないので、手を絨毯に縫い付けたまま、動きを大きくしていった。
二十代中盤という若さながら、海外映画にも出演している禄の家は、豪華で広々としている。一人きりだと広すぎるリビングに、貝地の喘ぎ声が響いた。
「ああっ……んっ、んっ……くじらおか、さんっ」
「禄って呼んでください」
「あっ、――っ……ろくっ」
「葵乃、すっげー可愛い」
奥まで入り込んで何度も突き上げる。貝地は気持ちよさそうに顔を歪ませ、腰をびくびく震わせた。
「ずっと好きだった。こうやって愛し合ったんだし、俺の恋人になってくれるよね?」
「あっ……俺で、んっ、いいん、ですか……っ?」
「葵乃がいいんだよ」
貝地の体を揺さぶるほど激しく突く。嬌声を上げ続けながら、彼はこくこくとうなずいた。
「めちゃくちゃ嬉しい。すげえ大切にするから」
禄は誰もが見惚れる笑みを浮かべ、恋人になった男に自分を刻みつけるように、そのまま腰を振り続けた。
やがて積み上がった快感が、貝地の中で限界を迎えた。
「~~っ!」
息を詰め、背中を反らした。禄も気がつけば、彼の中で達していた。
貝地が呼吸を再開して、少し落ち着いたところで、彼の唇に吸い付く。
唇を何度も吸って、舌を絡ませ合った。夢みたいだ、と思いながら、愛しい存在に手を這わした。
「大好きだよ、葵乃」
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